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【感想】スリル・ミー 成河・福士ペア

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日時:2021/4/10 15:00開演

会場:東京芸術劇場シアターウエス

上演時間:100分

公演詳細:ミュージカル『スリル・ミー』 | 【公式】ホリプロステージ|チケット情報・販売・購入・予約

 

初スリル・ミー!キャスト2名、ピアノ1台のミュージカル。全てのネタバレを回避し「実際にあった何かの事件を基にしている」ということしか知らない状態で観劇しました。ポスターの文字すら視界にいれず、どちらがどちら役かも頭に入れないで客席に座るという、我ながらなかなかの回避具合。もともと誰が何役かを知らずに観るのが好きなんですよね。

客席全体が、舞台上で何が起こるのか、一挙手一投足見逃すまいというような集中力で観ているのを客席にいて感じ取れたのが凄く良かったです。いい経験でした。100分本当にあっという間でした。途中上手く呼吸も出来ていなかったようで、終演後1時間ほど頭がぼーっとしてました。

 

 

以下めちゃくちゃネタバレです。初見だったので物語順が曖昧なのは大目に見てください。

 

 

客席通路を通って舞台上へあがる成河私。その緊張感に息を呑む。

そして53歳の成河私が話し始めたとき、記憶にある成河さんの声(エリザベート、タージマハルの衛兵)と全然違って誰だかわからなかった。福士くん(わたしが見た最後の記憶はのだめカンタービレ)でもないし本当に誰!?と思っていた(笑)。回想が始まり19歳になったら可愛いワンコみたいで吃驚。

スクールカースト上位であろう福士彼と、下位であろう成河私。でも成河私の、他の沢山の友人とは違う、自分だけが福士彼にとって特別であるのだ、という自信にぎょっとした。特別って、どういうこと?まるで肉体関係があるかように言うのだな、と思っていたら、あった。

(前述の通り、わたしは基になった事件について何も知らずに観ている)

でも気があるように見えるのは成河私だけで、福士彼は成河私を利用するために肉体を差し出しているようにしか見えなかった。だって福士彼は全然成河私のことを見ないのだ。福士彼が気まぐれに抱いているのだったら良かったのだろうが、成河私の執着が凄くて、結果的に搾取されているのは福士彼なのでは?と思うシーンがいくつかあって、観ていて辛かった。

キスシーンを見た時ソーシャルディスタンスは…??と吃驚してしまった。キスOKなんだ!?2.5次元なんかまだマウスシールドしているのに(聞くところによるとTDCホール第3バルコニーまでフェイスシールドしている公演もあったようだけど意味あるのだろうか?)。

放火のスリルに興奮する福士彼。手伝わされる成河私。いやいやいくら惚れた弱みといえどそんなリスクを冒してまで一緒にいたい相手なのか?と理性では思いつつも、成河私を通して(この物語は成河私の回想であるので、全てに成河私のフィルターがかかっていると思っている)描き出された福士彼があまりにも魅力的で、彼に惹かれてしまうこともよくわかるのであった。なんだろう、あの福士彼の魅力。感情がよく見えず成河私に酷い仕打ちをするのに、色気があって……。成河私が何を欲しているのか、福士彼がよくわかっているからなのかもしれない。この二人で炎を観ているシーンがとても良かった。どうよかったのかもう覚えていないのがもったいない。わたしの記憶力よ頑張ってくれ……!

契約書の歌、二人の声音が溶け合っていて気持ちよかった!音源欲しい。この組み合わせでも音源化してください。頼む。血で契約書にサインするとき、初めての成河私に対して福士彼が「やったことがある」と言った時の成河私の沈黙が怖すぎた。そんな特別な契約をする相手が僕以外にもいるの…?と言うかのような沈黙が。やっぱり成河私が対等であろうとするのが印象的。

盗んだ鞄の中身を確認して「こんなものしか入っていないのか」という顔をする福士彼を見て、彼の中の渇きが満たされることはきっと無いんだろうなと察した。もっと、もっととよりスリルを渇望して、先に進んでいくしかないんだろう。

盗みを手伝った代わりに見返りを要求する成河私に対して「気分じゃない」と言う福士彼。契約を交わしたんだから逃げずに果たせよと思うのも勿論わかるのだけど、ネクタイ外してジャケット脱いで(たよね…?記憶が曖昧)無気力のような状態で寝転がる福士彼を見るのも辛かった。回想が途切れたあと、53歳私が「5分ほど経ったあとに」と言ってからまた回想に戻って成河私が身なりを整えているのを見て、ご、5分!?5分で何が出来るの…作業じゃん……と思ってこれまた辛かった。どっちに同情しているのかもはやわからない。不健全な関係が互いを苦しめていないか?いや…互いなのだろうか?たまに成河私の方が力関係が強く見える瞬間がある。

ここのシーンだったか忘れたけど、もっと前かな…?ここかな…?キスシーンかな…?どこかのシーンで、二人を見ていてじわ、と僅かに情欲を催すような感覚がわたしに訪れて不思議な気分だった。演劇を観てこんな風に感じるのは初めてだった…。

スリル・ミー!の歌の成河私の必死さが怖かった。めちゃくちゃ必死すぎる。怖い。その執着心はどこから来るの。

いよいよ殺人の計画を持ち出したとき、福士彼が望んでいるのは父親の愛情であることがより明らかになるけれど、愛情が与えられていれば福士彼の渇きは満たされていたのだろうか?どうすれば歪まずに済んだのかなぁ。愛情が与えられていても弟が生まれた時点で駄目なような気がする。

殺す相手を誰にするかの話の際に真っ先に自分かと聞いて「お前」と言われたあとの成河私の反応、可愛かった…。

彼に弟を殺させまいと成河私が必死に静止するけれど、「家族だから」殺してはいけないというのはかなり捻り出した理由で、きっと本当はそんな身近な相手を殺したらすぐにバレる、ということの方を心配しているのだろう、成河私は。それに親の愛を掻っ攫われたから憎いのに、「家族だから」なんて福士彼にとっては聞きたくない言葉だったのではないだろうか。

生贄の羊を子どもに決めた時からわたしは、これから訪れる悲惨な出来事に体が強張ってしまった。これ、内容を知らずに観るの、人によっては駄目かもしれないな…。わたしも子どもの実像があったりしたら見られなかったと思う。

スポーツカーをだしにして子どもを拐う時、うたのおにいさんに時々悪魔のような地声がまざるのが怖かった……。子どもが犠牲になるのは辛すぎる。でも床の白い枠が赤く光ったのは良かった。

ことを成し遂げたあと、座って成河私を福士彼が後ろから抱きしめて二人とも息が荒くなっているのを見て交合(概念)を示しているのかと……思っ……。わたしだけ……?的外れなこと思っていても初見なので許して欲しい…。

殺してしまったことよりもバレることへの恐怖が勝つんですね。まあこの二人なら当然か。成河私が眼鏡を失くしたと言っているのに何故福士彼は興味を持たないのだろう。このあとの電話のやりとり好きだった。

成河私の弁護を福士彼がやると言い出したとき「何言ってんだお前…?お前も捕まるんだよ!!」と嘲笑したくなった。福士彼がここまで来て自分は大丈夫と思っている理由がわからなくて怖い。

犯行時刻に女とワンナイトラブしてたっていう嘘は慣れてない成河私には難しすぎるよ。福士彼と違うんだからもっと細かく指導してあげて欲しい。ダメだよ、ボロが出るよ。

計画の段階から成河私が不安がる度に自分の計画は完璧だとか言ってなんとか言いくるめてたのに成河私がヘマした途端切り捨てるの、わかってはいたがあまりにもサクッと切り捨てて本当最低だな!成河私に裏切られても知らんぞ…。そういえば公園での成河私の「待てよ!!!!!」にめちゃくちゃ吃驚して一瞬何と言ったかわからなかった(笑)。成河私ほんとうに強い。なぜ福士彼の言うことを聞いているのか?惚れた弱みなの?なんなの?それにしても変だよ。

結局福士彼も捕まった。必死に外に出たがっている姿も、成河私に対する姿も、「死にたくなーーーい!」も痛々しくて見ていられなかった。福士彼も人間の感情があったのかとわかる数少ないシーンだけど、そんな福士彼を見て、呆れでもないし、軽蔑でもないし、どういう気持ちを抱いたのか言葉にするのが難しい。

護送中の成河私によるどんでん返しは、驚きは殆どなく腑に落ちたという気持ちが大部分を占めた。至るところで感じていた違和感がようやく繋がった。これ他の組だとどうなんだろう?他の組も観たくなった瞬間だった。なぜチケットを取らなかったんだわたしよ。

福士彼がずいぶんあっさりと成河私を超人と認めたのは意外だった。もう彼は心が駄目なのかもしれない、と思った。成河私はこれから彼とずっと一緒にいられるけど、心は手に入らない。

「空を飛ぶ奇妙な二羽の鳥のように」のような台詞を成河私が言ったとき、照明がパッと変わったんだろうか?凄い引力で引き寄せられてオペラグラスも使っていないのに成河私がアップに見えた。演劇のこういう瞬間がたまらなく好きなんだ…観に行って良かった…。

99年めちゃくちゃ良かった。音源欲しい。最後の「永遠」の声音全然違うのね…。

釈放が決まって、自由を手にした成河私。「じ…ゆう…?」と言った、自由の言葉の意味のわからなさよ。永遠に監獄で過ごすはずだった人生から最も遠かったもの。硬く結んでいた両手を掲げてゆっくりと解く様は宗教画のようだった。

ラスト、「待ってたよ」から、寄って行って、こちらを向いたところは覚えてるけど他が記憶になくて。どうしたわたしの記憶よ!吃驚して意識飛んだのか?

写真の中の美しい彼と再会して、成河私のこれからの人生はまた始まるんだろうか。穏やかに過ごすのはなんだか違う気がする。きっとずっと成河私のそばに福士彼はいる。

 

(わたしの視力が悪くて肝心の最後の表情が見えてないという失態……)

 

 

まだ感想はあるんですがいよいよ指で打つのがしんどくなってきたのでここらへんで終わりにしておきます。もうちょっといろいろ考えてから書きたかったけど、とにかく早く感想をアップしたかった!!!(また纏まってなんかあったら追記するかも)

多分この組だからなんだと思うのですが、見終わったあとストレートを観たんだったかな?と思うほど、歌と台詞の境目を感じなくて(ちゃんと歌っているのに!)吃驚しました。もっと気分悪くなるかと思っていたのですがそんなことも無くて良かった。見終わって何日もず〜っと成河私が頭の中を支配していましたが。成河さん、53歳と19歳の切り替えがお見事すぎたしなんかもう、はぁ〜ッ上手い……!しか言えぬ……。

今年はこの1公演しかチケットを取っていないので他ペアは見られないのですが、次また上演されることがあったら絶対全ペア観るぞと心に誓いました。きっと全然違うのだろうな。

わたしよ、次回はオペラグラスを持っていくようにしてね。この演目は表情見えた方が絶対いいよ。

 

観終わってからこのペアに「資本主義の病」というフレーズがついていることを知ったのですが、何…それ……初見でそこまで考えるのは難しい!!

 

 

 

 

そういえば開演前にグッズ画像見て「ハンカチの色かわいいな〜!面白かったら終演後に買おう〜」と思ってたんですが、終演後に改めて見たらロープに血がついていることに気づいてウッとなり買えませんでした。泣。